———じゃあ、まとまったところで最後の質問に行こうか。今までに失くして悲しかったモノを教えてください。
江頭「俺はある。失くしそうなもの、なんだけど。こないだ、大学入ってからすぐに買った1万くらいの自転車のチェーンが外れたから修理に持っていったのね。そしたら、自転車そのものにガタがきちゃっているらしくて、買い替えだって言われて…。『ああ~、そうですか…』って」
———結構愛着があったんだね。
江頭「新しいの買えって言われたときから、ここ最近はずっと『ああ〜…どうしよっかなあ…』って悩みながら乗っている状態」
木根「まあ、消耗品だし」
江頭「消耗品って言わないでよ〜」
———4年も経てば大体のものにはガタが来るよ。ほぼ毎日使っていたんだよね?
江頭「そう。メンテが悪かったのかなあって反省してる…」
木根「卒業するまではそれ使いなよ」
江頭「卒業するまでに…、ってか来年には買い換えようかなって」
———じゃあ、木根は?
木根「俺はね…最近だと定期。でも、稽古場には何が何でも行かなきゃいけないから、片道980円かけて来てたよ。しかも部署の会議とかもあるじゃん。その前にバイト入れていて間に合わねえなってなると、定期があったら800円くらいで行けたのに、ないから新幹線で来てた。片道2000円くらい(かかった)」
江頭「もう大富豪の移動じゃん」
———学校に新幹線で来る人、はじめて聞いた。
木根「定期がないと、出費がやばいことになる」
江頭「3日間で1万くらいいきそうだな…」
———それは結局、どこで見つかったの?
木根「え、普通に忘れ物センターに届いてた」
江頭「あはは(笑)」
木根「でも、土日祝日を挟んだせいで3日間お休みですって言われて!」
———それは大変…、でも、見つかっただけ良かったよね…。そんなところで、今回のインタビューは終了とさせていただきます。ありがとうございました!
木根・江頭「「ありがとうございました〜」」
———今回のインタビューは演出の木根優大さん(木根)と役者の江頭泰之さん(江頭)です、よろしくお願いします。
木根「よろしくお願いしまーす」
江頭「まーす」
———演出に聞くのもちょっと変かもしれないけど…、今回の公演、どうですか?
木根「今回の…公演どうですか…(苦笑)」
———まだ始動して間もない(インタビュー日は9月28日)から難しいかもしれないけど。
江頭「ああ、でもそういうもんなんじゃないの? 始めは」
———ここから広げていくからね。最初はざっくりとお聞きしちゃいます。
木根「今回の公演はね、今までと違うことをたくさんやっていますよね」
江頭「これ(インタビュー)もそのうちのひとつだよね」
木根「インタビューもだし、美術監督っていう部署も作ったし、会議制度を敷くようにもして」
———『俺、LINE嫌いなんだよね』って言っていたよね。
木根「そう。もう、全部会議でやっちゃおうと思って」
江頭「ツラを合わせて話そうってね」
木根「あと、オーディションに来た役者をほぼ全員採用するっていうね」
江頭「そうそうそう! それ今回すげえなって思った!」
———その結果、役者の人数がワークショップ公演(8月の内部向け公演)ばりになったよね。
江頭「だから、俺ワークショップやるのかなって思った(笑)」
木根「うん、まあ……作品自体も……どうなんですか?」
江頭「うん?」
木根「俺の全作品に出てくれた役者として」
江頭「あー…木根の作品ってさ、いつもほら、最初わけわかんないとこから始まるじゃん。なんでこのシーンを最初に置くのか、とか、なんでこのシーンがあるのか、とか」
木根「はいはい」
江頭「そういうものを、最終的に繋げていって作品として完成させていく人じゃん。だから今回の作品もそういう感じなのかな、ってずっと思ってる」
———予測のつかないところから始まって、最終的に全部話が繋がる、と。
江頭「そうそう。最後の最後に、『あっ、こういう理由でこういうことを言っていたんだ!』ってのが(分かるようになっている)」
木根「はいはい」
江頭「俺そういうの大好きだからさ」
———伏線を全部持っていってくれるもんね。
木根「ああ…ありがとうございます。ただその、今回は人数が多すぎて、その伏線が最終的に…」
———広げた風呂敷を畳めなくなっちゃう危険が?
木根「そう…」
江頭「いや、木根は着地点を作るのがうまいからさ」
木根「俺はね、着地点は最初に決めておいて、それ以外は全部自由(にしている)。普通の稽古場なら、台本があって、その上で(演出が)やりたいことを全部伝える、っていうことが多いと思うんだけど、俺の稽古場では、着地点だけ決めておいて、あとは役者と一緒に作っていく、みたいなことが多い」
江頭「そうだね」
木根「エチュード(即興芝居)とか色々やらせて、『あ, それ面白いじゃん、これも面白いじゃん』っていうものをどんどん作っていく。で、それを採用して加工する感じ。だから、そこだね、今までと大きく違うところは」
「そして人生はつづく」
スペシャルインタビュー 最終回!
公演に参加しているキャスト・スタッフさんにあれやこれや聞き出して、
この作品をより深く理解していこうという、この企画。
最終回は、
この公演を一から、構想し作り上げている演出の木根優大さんとイケメンボイスと明るいキャラクターが特徴の江頭泰之さんです!
演出 木根優大 × 役者 江頭泰之
Plofile
文学部4年
「キノパカ企画」、「劇団てらす。」、「劇団文明開化」など、外部の多数の団体に立ち上げからメンバーとして関わる。
自身でも「映画が死ぬほど好き」と語るほどの映画好きで、映画と演劇の両方の視点から作品を俯瞰し、より良い作品作りを目指す。
普段の顔はただただ優しく、皆が思わず慕ってしまう雰囲気を持つ。
木根 優大
Plofile
文学部4年。
演出・木根の作品すべてに役者として参加している。演技はもちろん、彼の魅力はその声にも宿る。
常に熱い想いを持って演劇に関わり続けており、コミカルな演技からシリアスな演技まで幅広くこなす。たまに出る方言がチャーミング。
江頭 泰之
———演出の仕方も違うし、新しい制度も取り入れたし。
木根「そうね。今回はね、“脱脚本至上主義”っての掲げていて…」
江頭「そう(笑) なんかそういうかっこいいのを掲げていたよね!」
木根「今までの劇研は脚本がドン!とあって、締め切りも決まって、完本してからさあ演出だ、っていう流れだったけど、俺はそういうのができなくて…」
江頭「ふふ(笑)」
木根「稽古場で役者と関わりながらどんどん作っていくタイプだから、締め切りを決められると……うん…」
———稽古の中でキャラが固まっていくの?
木根「稽古の中で、『あっ、この役者達ならこういうお話ができるな』っていうものを探っていくから……稽古の前に完本しろって言われると、絶対無理」
江頭「ちょっと今、ゲキケンの制度にケチをつけてるよね(笑)」
木根「あはは(笑)」
———今までの制度を壊してきている、って意味では筋が通っているけどね。
木根「だからそう、脚本には全然、重きを置いていないよね」
江頭「現段階での脚本もさ、まだバッチリできてはいないからさ」
———『ここからここまでのシーンができました』ってポンって上がってきているよね。
江頭「そうそう。で, 部分部分を作っていって…木根はそのピースをまとめて作り上げるのがうまいからー…だから、まだ(脚本も)印刷してねーから」
木根「あはは(笑)」
江頭「早く印刷させろって言いたいんだけど…」
木根「そう。(脚本を)印刷するなっていうのも俺の指示」
江頭「それも新しいよね!? 脚本を印刷するな、なんて」
木根「『脚本はいらないです』って役者に言った」
江頭「自分へのダメ出しをどこに残せばいいんだろう、って(笑)」
———今はまだ、通しごとに配役が変わっているんだよね?
木根「そうそう。それも新しいんですよ。オーディションの時点で配役を決めないっていうね」
———思わず『正気?』って思っちゃった。
木根「毎回、稽古場で『今回この役やりたい人〜』って募集して、手を挙げた人にやらせている感じかな」
———媛香(現3年・役者)からも、『他の人の演技のいいところを取り入れられるからすごい新鮮』って聞いたよ。でも、役作りの時間が…。
江頭「そうね、役作りの時間がないからそこが難しいかもしれないね。木根の作品ってそういうことが多いよ。いろんな人にいろんな役をやらせるっていうのもよくある話だし。前の(作品)だって」
木根「キノパカ(キノパカ企画・2016年7月に公演『ひとりで生きる』を発表)ね。みんな1人2役くらい持っていたね」
江頭「その前の作品も、僕は1人2役やっていたし」
木根「役者に違う人になってほしいとかではなく…物語を見てほしいんでもなく、役者が演技をしているところを見てほしいから。だから、『この人はこういう演技をするんだな』ってところを…」
———脚本じゃなくて、役者自身を見てほしい?
木根「そうだね。役者が演技してること自体がもう面白い! っていう感じだから。違う人になりきれっていうことではなくて、その人が…」
———こういう演技もするし、ああいう演技もするし、と?
木根「そう、そんな感じ」
———木根は演出プレゼン(脚本・演出を担当したい人は、自分のやりたい作品を部員の前でプレゼンする。最終的には部員からの投票で作品を決定する)で映画を撮りたいって話していたよね? 最初にゲキケンを選んだのはどうしてだったの?
木根「俺はね、実はゲキケンを選んだわけじゃなくて…最初はとにかく表現活動がしたくて、いろんなサークルに入ってたの! お笑いサークルとか、パントマイムサークルとか…放送研究会にもいたし」
江頭「初耳!」
木根「そのなかのひとつとして演劇があって…。だから最初は、こんなにゲキケンにいるとは思っていなくて」
江頭「やめるって言っていたよね?」
木根「そうそう。でも1回参加しちゃうとさ、公演の準備にすごい時間取られるじゃん。
———取られるね。
木根「気付いたらゲキケンにしか友達いなくて(笑)」
江頭「あはは(笑) でも、俺もそうだったよ」
木根「他のサークルに参加できなくて(笑) もうゲキケンにいるしかないよね(笑)」
———なるほどね(笑) じゃあ、泰之は?
江頭「俺は…劇やりたくて、演技したいからだな。いろんな劇団があるけど、でかいとこがいいなーって(思って)バッてここに(決めた)」
木根「俺も、演劇研究会っていちばんそれっぽい名前だったから」
江頭「それもあるね。他のサークルは皆劇団名だしね」
木根「なんかね、とりあえず入っちゃったかな。演劇にそんなに興味もなかったし」
———そう言っていたよね。
木根「今も、そこまで興味があるわけではない」
江頭「未だに映画(の方が好き)だもんな」
———木根たちの代は今回で卒業だけど、それぞれ泰之は公演皆勤賞、木根は何度か演出やった身として、ゲキケンへの思い入れみたいなものはある?
木根「特にない…んだよね…」
江頭「木根はないんだろうなって思った」
木根「演劇できる環境をくれてありがとう、ってところで(笑)」
江頭「お前、短いなあ!」
———でも、そこに尽きるのかもしれないね。こんなにたくさんの人数と、お金と、時間を使えることってそうそうないもんね」
木根「他の本公演の演出に腹立ってたね。ずっと外部での公演で、お金も時間も人手もない中でやっていたから、羨ましいな~~~って」
江頭「めちゃくちゃ制限があったもんな」
木根「逆に、今は困っているかも。『衣装は全部白がいいです!』、『素舞台(セットを作らない舞台のこと)がいいです!』って伝えたら、もっとお金も時間もあるから工夫できるって言われちゃって…」
———最初の時点で木根から『舞台美術はいらない』って言われたから燃えてる、って舞台美術のチーフが言っていたよ。
木根「俺、秋公演の演出に向いてないみたい!」
江頭「前回の外小屋(学内のスタジオで、ゲキケンとして公演を打つのではなく、外部の団体に参加すること)なんか、舞台を紐と平板で済ませていたよね」
木根「衣装は全部ユニ〇ロでね。だからその時は、場所代込みで20万しか使ってない」
———めちゃくちゃ安い。
木根「今回の公演の舞台美術予算の3分の1(笑)」
江頭「そんなんで公演できるんだね!?(笑)」
———いかにこの公演にお金をかけているかが分かるね。
木根「今、どうお金を使おうか悩んでる…」
江頭「公演費1人当たり8000円とかで良かったんじゃないの?」
木根「だから…うん、すごいとこだよね、ゲキケン」
———じゃあ、次は泰之。
江頭「うーん…入ってきてさ、先輩たちがすごいなってずっと思っていたかな。3つ上から1つ上まで、それぞれすごいこだわりがあってさ。いつも先輩たちが出ると凄い凄いって言われるから…。俺も人間だからさ、やっぱり悔しくて」
木根「俺たちの1個上の男の先輩とかは特にね」
江頭「そうそう!」
木根「(1個上が)キセキの世代なんて呼ばれているから、その下にいる俺たちの立場がね!」
江頭「そうそう! だから、俺たちが4年生として何を見せつけてやるかっていうのが」
木根「ずっと悔しかったよね!」
江頭「そう! いつも1個上なの! 褒められるのはいつも1個上!」
木根「で、俺はそれを超えてやろうと思っていろんなことやっていたわけ。1年生のときの文明開化(現4年生が1年時に立ち上げた劇団)とかね。でも俺が途中で、『お前ら知らねー!』って言って出ていって」
江頭「出ていかないでほしかったなあ(笑) 俺は、先輩を超えるために何をすればいいんだろうと思って、それを探るためにまずは先輩と仲良くなるところから始めた。で、得たものを下の学年に継承して、それを自分なりに取り込んで大きくなってもらうっていうことをやりたかったんだけど…なかなか上手くいくもんじゃないね。でも、先輩を超えるためには今年『も』良かった、じゃなくて、今年『が』良かった! って言われたい」
———どうしても比べられちゃうものだからね。
江頭「比べられるくらいなら過去なんかに負けたくない! っていうか。絶対イヤじゃない? 先輩たちの残してきたものに負けるって」
木根「俺は逆に、ゲキケンには積み上げられてきたものがあるから、それとは別に外で積み上げてきたものを持ってきている。だから稽古も全然違って、基礎練からもう俺メソッド。オーディションも基礎練の説明から始まったよね?」
江頭「そうだった、そうだった(笑) 皆が戸惑っていたよね、1年生もポカーンって(していた)」
木根「先輩たちほどポテンシャルがあるわけじゃないから、ゲキケンにずっといたら先輩方には追いつけないなって。俺たちの代、絶対的にコンプレックスがあるよね」
江頭「そう! 先輩たちに対するコンプレックスが半端じゃないよ! 勝ちたいよね」
木根「勝ちたいよね」
演出とは?
出来上がった脚本を、視覚的にさらに魅力的にするため、役者の演技、動きから、舞台の音や光、色、衣装、チラシなど、すべての表現を一切に取りしきる部署です!
———じゃあ、次。泰之は今回の公演どう?
江頭「俺ね…えー、今回の公演がどうだったか、だっけ? まず、役者をやるのが1年ぶりだよね。だからどの4年も言うと思うんだけど、体力がちょっと追いつかない(笑)
木根「今回の稽古場は体力を使うしね」
江頭「そうそう。木根の稽古は毎回体力使うものが多いからね。精神よりも体力。名前鬼(稽古のひとつ。名前を呼ばれた人が鬼になり、近くの人を追う)が本当に弱くなったなって思う。作品はね…楽しみだよね。自分たちでもどうなるか分かっていなかったものがだんだん見えてくる感じが。ある意味お客さんとしてその場にいるような気分になるもん」
木根「そうね、いつもは本番1週間くらい前に脚本完成させて、『よし、行くぞ!』ってなるんだけど、今回は完成してから本番まで1ヶ月くらいあって、自分の中でもう『どうしよう!』っていう…」
———むしろどうしようってなるんだね、早すぎて。
木根「脚本に締め切りが設けられているから、第1回通し(9/30。現時点でできている部分までを部員の前で見せる稽古)までには全体図を見せろって(言われて)。だから、今はそれに向けて焦って書いているから…今やっていることと全然違うことを本番ではやるかもしれないっていうことは、稽古場でも言っているかな」
江頭「まあ、正直2週間前くらいだったらいくらでも修正はきくと思うけどね」
木根「いろいろ新しいことをやっているって言ったけれど、稽古場記録もそのひとつで。木根の実験記録、くらいのものなんだけど」
江頭「あれは面白いよね。いろんな稽古の実験をしているけれど遊びじゃないっていうところが。俺は結局遊んじゃうんだれど」
木根「あ、その話する? 泰之は俺の作品に全部出ているんだけど、何で泰之を全部に出しているのかなってことを考えた時に…やっぱり泰之は言うことを聞かないんすよ!(笑)」
———あはは。そうなんだ。
木根「『こうやれ』って言ったことを、絶対にその通りにはやってくれなくて」
———でも、それが選んでいる理由なんだ?
木根「そう。俺の稽古場では実験して、色々試してみたいから、全部が俺の言う通りだと『想像通りだな』で終わっちゃう。でも、泰之は絶対に遊んでくるから、『あっ、そっちの方向があるんだ!』っていうアイデアがどんどん出てくる」
———結構重要なポジションじゃないですか!
木根「そう。今回の稽古場でも、泰之が遊んだからこそ生まれたシーンはたくさんある」
———おお~。いい話が聞けた。
木根「こっちが脚本書くときに持っていたイメージを絶対に崩してくるというか…凄く真面目なシーンなのにめちゃくちゃギャグにしてくるんですよ〜」
江頭「あはは(笑) それ悪い奴じゃん、俺!」
木根「でも、そのシーンってそういう可能性もあったんだって発見があるから」
江頭「ダメな役者じゃん…(笑)」
———でも、そのおかげでシーンの可能性が広がっていると。
木根「シーンに広がりを持たせてくれる感じ」
江頭「自分の作っているキャラクターの中で、『ここまではできるな』って思うものもあるし、稽古場でも『こういうことはやめて』っていう指示がまだないから、じゃあどこまでやっていいんだろうってのが分かんないから(試してみている)」
———どこからがアウトかを探っている?
江頭「そう。いつも度を超えてやってみるんだけど…まあ、なかなか周りに理解はしてもらえなくて(笑)」
木根「結構みんな真面目だから、こう、俺の理想に従おうとしてくれるんだけど、ここ(江頭を指差し)は壊してくるから」
———泰之は木根がどういう方針で稽古をしているのかを知っているからね。
江頭「いやあ…、だからその、そういう仕事だと思っている! 役者としては!」
木根「イラっとすることもあるんだけどね。『遊びすぎだわ!』みたいな(笑) 真面目にやれって思うことも多々あるけど、そういう面では結構助かってる」
江頭「その線引きを察しないといけないんだろうけど、言われるまでやりたくなる主義なのね」
———ストップをかけられるところまではやってみよう、みたいな?
江頭「そうそう。怒られるまでやってやろうって」
木根「皆は俺の言うことを聞いてくれるんだけど、泰之は『あわよくば俺の演技を採用してくれ!』みたいな。だから…戦っているよね(笑)」
江頭「あはは(笑) 初めて言われたわ」
———でもそのおかげでできたシーンもあるんだったよね?
木根「そうそう。本番1週間くらい前になると、ちゃんと俺の要望に合わせてくれるし、クラッシャーにはならない。し、稽古場を楽しくしてくれる」
江頭「あーよかった、『こいつ本番まで壊してくんだよ!』とか言われるかと(笑)」
木根「最終的には俺に合わせてくれるから」
江頭「自分の中で作ったキャラクターを稽古場で提出するのが役者の仕事だと思っているから、やっぱりまだ時間があるうちは色々やりたいじゃん。大学生って、社会人になってから劇団やっている人と比べれば金も時間もある方じゃん。なのにクオリティ低くなってしまいがちなのは何故なのかっていつも考えるの。で、(結論としては)時間があるのに演出に合わせてばっかりだからじゃないか、と」
木根「(合わせてばかりいると)演出の理想以上のものにはならないよね」
江頭「やっぱりちょっと違うものを入れていかないと面白くはならないし。で、行きすぎたら止めるのが演出さんの仕事だなって思いながら(いつもやっている)」
木根「遊ぶ勇気と怒られる勇気があるよね」
江頭「怒られたくはないけど(笑) でも、ただ従っているだけだとフツーじゃん! そんなことは皆できるじゃん。皆が皆できるわけじゃないことをしたい。それぞれ違うんだしさ」
木根「演出的には…なんだろ、その人の個性を抑制することより引き出すことの方が大変だから、どんどん来てほしい」
———なるほど。お互い、はじめて聞いた話もあったみたいだね。
江頭「たまにイラっとされるんだ、俺(笑)」
見せられないよ!